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ハイテクベンチャー成功と失敗のレシピ −シリコンバレー起業家コミュニティからのメッセージ− SVJEN初代プレジデント 外村仁氏が熱く語る!“元気印九州ベンチャー創出論” 2005年度アジア・ラウンドテーブルも今回で3回目を迎えた。九州の起業家や起業を目指す方々、起業支援者にも本会が定着してきたところで、今回、ベンチャー起業のメッカ、シリコンバレーから日本と米国をまたにかけ活躍中の起業家支援者であり、かつ日本人起業家として成功おさめておられる外村仁氏を講師にお招きした。外村氏は、モデレーターである谷川徹氏(主催:九州大学知的財産本部/副本部長)とは、米国シリコンバレー(以下SV)で起業家支援団体SVJENを立ち上げた仲間であり、自らもSVでベンチャーを立ち上げた経験をお持ちである。九州・熊本のご出身であることから、現在は九州の起業家を熱心に支援する一人だ。 外村氏にとって福岡は、過去に福岡県主催のシリコンバレーツアー講師として参加した際、訪れた縁で非常に馴染みの深い土地柄である。「やっと来ました!」の第一声と、「本日の講演には九州各県からの参加をいただき、特に多くの事前質問があったこと非常に嬉しくも、感心しております。」という講師のコメントから講演はスタートした。軽快でテンポ良いトークと、説得力に富んだ貴重な体験談は、起業家や起業を志す参加者を終始魅了し、気さくなお人柄も手伝って、とても和やかな雰囲気の講演会となった。 ‘外村流’成功術は、SVと日本社会との違いがどこにあるのか?という分析から始まった。それは「個人ベースであこと」。つまり、「何をしてきた誰」が問われる社会である点が、明らかに日本社会とは異なるということだ。SVは組織の看板を背負わずに、個人のコミュニケーション力とそれにより築かれるネットワークがものを言う世界である。その中にあって個人が埋没しないためには、自己を主張する‘押しの強さ’が有効な武器となる。自己表現を支えるものは‘情報でなく生の経験を聞く、見る’ことで得られ、自分の中で単なる知識でなく、常に意識的に‘得る過程に重点を置くこと’でそれが身に付きパーソナルバリューをあげる糧となる。 外村氏のこれまで歩んでこられた足跡をたどるってみる。東京大学工学部で生理学を学ぶものの、外資系および日系企業で経営コンサルティングを経験。その後、アップルコンピューター・ジャパンに入社し、ビジネスディベロップメントとマーケティングの職を歴任。後年はマーケティング本部副本部長として、新規市場開発、OSプロダクトマーケティング、MarCommなどを担当。その時に知り合った優秀なエンジニアと一番目のベンチャー企業であるGeneric Mediaを立ち上げ、その後一端休業、現在はFirstCompassを経営する。小さい頃はアマチュア無線が趣味で、学生のころからバックパッカーで45カ国ほどを回った強者である。「若い頃は九州を飛び出していた。何かに情熱を傾注するのもベンチャースピリットを育てる上で必要なことなのかと今は思えます。」Generic MediaをSVで起業したきっかけは、アップル社在籍時代に知り合った優秀なエンジニアとの出会いであった。ネットワークができあがっていたことでスムーズにことが運んだ。GenericMediaはストリーミングの制作会社で、映像のコンテンツをデバイスによって自動変換(エンコード)するブラックボックスを置くことに目をつけ、非常に効率的にリンクを形成できる仕組みを立ち上げるのに成功した。最盛期は社員40名規模に拡大。2002年にシリコンバレーが不況にはいり、そのあおりを受け2003年夏に廃業に追い込まれた。結果は、良い経験とネットワークだけが残ったと明るく語る外村氏には、失敗を肥やしにしていく常に前向きなチャレンジ精神がある。 講演で外村氏が再三に亘り強調していたこと、それは米国SVでもっとも大事なことは、ネットワーク(人脈)である。意外性を感じられるが「アメリカはコネ社会」「決して平等ではない」、事実、外村氏自身、渡米し‘アメリカは平等の国’という幻想は打ち砕かれたという。コネクションがアメリカでは非常に大事になってくる。言い換えれば人と人との信頼関係を重んじる社会である。ネットワークの構築に欠かせないのは、まず相手に自分を知ってもらうこと、伝える能力が問われる。日本の奥ゆかしさを重んじるカルチャーとは正反対の「言ったモン勝ち」の社会がアメリカである。そこで成功するための秘訣は‘押しの強さ、強引さ’と繰り返し、「是非日本でも皆さんに意識してとりくんで頂きたい点である」と語る。 2006年のSVは何となく昨年感じていたことが数字として現れてきたという。雇用数が増加し、SV地域人口が増加。そして最も注目すべき点はSVで成功を収めた重鎮が「SVはアイデアとクリエイティビティの中心たるべき」という発言をし出した。つまりは、IP生産母体からビジネスソリューション発掘に力を入れ出したという。それに伴い、教育水準(特に音楽・アートなど)をあげることに重点が置かれ、感性を磨くことがアイデアとクリエイティビティを育てることにとって不可欠だと外村氏は語る。従来は、SVの中心はサンノゼだったが、最近はサンフランシスコに興味深い企業が出現してきた。これはサンフランシスコには文化があり、クリエイティブな感性が育ちやすい。 SVの重要性と特長とも言うべき点は‘付加価値が高い産業と所得層が集中している’点にあるという。アジア系、インド系住人が多くを占め、それぞれの人種が強い結びつきを持ったコミュニティを形成している。日本人起業家は中国系・インド系と比べまだまだ少ない。日本人起業家の中でも、外村氏が成功により近いと思われる日本人起業家に共通して見られるのは、シリアルアントレプレナーであるという。失敗を重ねながらも、彼らは何度もベンチャー起業にチャレンジしている。アメリカ人によるマネジメントを経営に取り入れている点にも注目したい。 起業支援の立場に視点を移してみると、外村氏自身が「起業を通じて得たもの、失ったものは何か?」という質問をマスコミなどから受けることがある。その時、外村氏は必ず、レポーターの期待に反して「失ったものはない」と答えるそうだ。「失わずして起業・経営が可能なのがSV」とも豪語する。そのことを言わしめるのは彼がこれまでに築きあげたネットワークがあればこそかも知れない。チャレンジャーや起業経験を持つことがアメリカでは賞賛に値し、尊敬を得ることにもつながる。結果、自信を生み更なるやる気が湧いてくるという、まさに起業家王国たるアメリカンカルチャーがSVには息づいている。 また、視点を変えた支援側の意見として自問自答して導き出したチェックリストを紹介された。「起業家の声をこれまで広く聞いてきたか?」「起業家ニーズを自分のアクションにつないでいるか?」「失敗しても良いからやってみろと言ってあげているか?」「敷居を高くしすぎることが阻害要因になっていないか?」「考えすぎてアクションが遅くなっていないか?」「本当に誰のためにやっているかは明らかか?」「必要なこと、望まれることを支援しているか?」これらの点を、支援者サイドにある方に是非再認識して頂くことで、本来の支援が実現するのではないかと語る。 更に、スタンフォード大学の人工知能の大家である、エドワード・ファイゲンバウム博士のコメントを事例にあげて、我々がSVで学ぶべき点、九州でのシリコンバレーにふさわしいあり方について言及した。それは、ファイゲンバウム氏が著書の中でのこした「怖いと思った日本があまりにも元気がない」「産業をかえていくような企業がなぜ生まれないのか」との問いかけである。外村氏の分析によると、その昔、ものが足りない時代、日本でもチャレンジ精神が旺盛だった。しかし社会が豊かになるにつれ、若者に安定志向が根付いていったことが、日本の起業率がアメリカの起業率の3%に満たない現実に現れているというものだ。 ‘じゃあどうする?’−「起業家ハビタット(生育地)」つまりは、一点を改善するのではなく、以下にあげるような環境整備が不可欠となる。
これらの効果的情報発信の積み重ねが波紋を描いて広がり、バビタットを育てる。 最後にDavid Brunarからのメッセージビデオ映像が流された。Davidはビジネスプランコンテストで選ばれ、メンターを紹介され、そこで起業に感心のある仲間を集めベンチャー関連の学生団体を立ち上げた経験を持つ。同じ興味を持つ人とのネットワークができることで刺激を受けることができた。これらの体験をとおして得たものはとても有意義な経験として役立っているという。外村氏は日本のベンチャー起業もしくは、ベンチャーに関心のある人にも、ぜひこのことをおすすめしたいという。そして強調すべきは「組織をみるのではなく個人をみよう」「情報ではなく生の経験を磨く」「知識ではなく、それを得る方法を知る」を繰り返し、情報の正しさを判断する基準は決して自分自身ではなく、複数のネットワーク内におけるコミュニケーションによって確認されていき、判断基準が生まれるのだという。 これまでのアジア・ラウンドテーブルにお招きした講師の方々は皆、ベンチャー起業の成功者であるが、共通点として、多くの人々とのコミュニケーションによってすばらしいパートナーとネットワークをお持ちであり、何よりその人自身がすばらしい人材が集まってくる魅力を備えている点にあるとレポートをとおして感じた。最後に、モデレーターである谷川氏のコメントより。「本日の外村氏の講演を通して、ネットワーク社会の重要性を再確認した。起業メッカでの成功の鍵は相手にとって魅力あるパーソナルバリューをいかに磨いていくかにかかっているのではないか。尊敬される人材として、リスクをおそれず新しいことにチャレンジしていく精神が大変重要な要素ではないかと、私自身もアメリカSVでの体験を通して感じとった。その上で皆様にはアジア・ラウンドテーブルのような場ですばらしい講師の話を聞くこと、それに加えてそこに集まった人々との交流が何よりネットワークの糧となりネットワーキングの重要性を外村氏の言葉で、本日感じ取って頂けたら有り難い。」 (文:九州大学 猿渡映子)
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